看護師失格

 
糖尿病のおじいちゃんが来院。
2ヶ月くらい前からうちのクリニックに奥さんと一緒に通い始めたばかりなのですが。
 
脳梗塞の後遺症があって、歩くのもおぼつかないのに、運転は大丈夫といって、自分の車でいつも来ます。
今まで運転してた人が、車に乗るのをやめるのはとても不便なことだとは思うのだけど、歩行者としてはぜひ免許を返還していただきたいなぁ。安心して道路を歩けないわ。。。なんてずっと思っていたりします。
 
こんな言い方をすると他の患者さんからも怒られてしまうかもしれないのですが、歳をとってから糖尿病になって、そのコントロールがうまくいかない方は、自分に甘く、問題を人のせいにする傾向のある方が多いように、個人的な感想として感じます。
 
この方、晩酌のほかに夜中の2時、3時に目が覚めたときの寝酒もしているとおっしゃるので、先生が『すい臓をゆっくり休ませるためには、そういう飲みかたがいちばんよくないのですよ』というお話をしたのですが、眠れないのはとてもつらいんだということを訴えます。
じゃあ、お酒飲むくらいなら眠剤のほうがいいかなぁ。。。なんて考えていたところに、奥さんの小声の一言。
 
「6時から寝てるから。。。」
 
6時って。。。夕方の。。。?18時ってことですか。。。?
 
「5時半くらいに晩酌をして、そのまま眠くなって寝ちゃうみたいですよ。」
 
じゃあ、2時に起きても8時間は寝てますしねぇ。わざわざお酒飲んで寝なおさなくてもいいんじゃないんでしょうかねぇ。。。?

「そこから朝の6時まで寝てますね。1日中寝てばっかり。」
 
なんて会話を奥さんと一緒にしていたら、本人ご機嫌を損ねてしまった様子。
 
「腰が痛いんだから横になってないと辛いんだ。くだらないテレビ見てもしょうがないしな。」
 
んー。横になってるのはいいですけどね。。。目が覚めるのが嫌でしたら、寝る時間をあと2時間くらい遅くするといいんじゃないですかね。晩酌のあとすぐ寝ちゃうのも、糖尿病にはよくないですし。。。
 
「昔は毎日4合飲んでたんだ。」
 
。。。
 
これは何を言いたいのだろう。。。?とあたしが固まっていると、先生、脳梗塞のことなんかも出しながらやさしーくまた説得を始めてくれたので、あたしは奥さんと小声で会話。
 
奥様、朝からずっとご飯作ってばかりじゃないですか?
 
「そうそう。1日中ね。」
 
「こいつはほかに何にもしてないんだから、それくらいなんでもないんだ。」
 
  
  
。。。あ。聞いてたのね。
このくらいの年配の方には、こんな旦那さんが多いのでしょうね。
熟年離婚が増えるのも頷けるような。
でも、いけないわよね。
患者さんのこーんな一言で、きれそうになっちゃ。
自分は1日12時間も寝てて、身の回りのことぜーんぶやってもらわないと何にもできないくせにーっ!なんて心の中でも思っちゃうなんて、看護師として修行が足りないわよね。
 
でも3年位前には直接旦那さんに言っちゃったことがあるから、ちょっとは成長したかしら?
あの時は、奥さんが患者さんだったけど。
 
50代の女性、検査で乳がんが確定して、入院と手術の日取りを決めようとしていたとき。
一緒にいた旦那さんの一言に、あたしは言い返さずにはいられませんでした。
 
「○月○日は、僕がいつも行く病院予約してる日なので、この人に車で送ってもらわなきゃいけないから、そのあとにしてください。」
っておっしゃったものですからね。
 
「奥様が大変なときに、何おっしゃっているんですか?!そこの病院なら、タクシーで2000円ちょっとでいけますよ!予約の日にどうしても行かなきゃいけないなら、タクシーでいかれたらどうですかっ!」
 
なんて。。。奥様が黙ってるのに、看護師が言っちゃいけないですよねぇ。。。
でも、つい、感情が先行してしまって。
ただね。それまで黙っていた奥様、そこで一言いったんです。
 
「そうね。いつもあなたにばかり合わせているけど、私がこんな大変なときくらい、自分の病院くらい一人で行ってくださいね。」って。
 
自分の気持ちを殺して生きている女性、きっとこの世代には多いんだろうなぁ。
その優しさに甘えているだけで、感謝をしない男の人も、多いんだろうなぁ。
あたしだったら、絶対大喧嘩。